エッセイ|果たして人間が「時間」を手にし、操れるのか
こうき
「脳科学」に興味を持ったきっかけ
僕が高校で陸上部に入っていたとき、毎日同じ場所、同じ距離を走っていたら、だんだんと「今のペースは1km何分ペースくらいかな?」と、時計を見なくてもだいたいの時間がわかるようになってきました。このような「そろそろ時間かな?」と感じる感覚は五感には含まれませんが、きっと皆さんにも似たような経験があるのではないでしょうか。例えば、朝の準備をしているときや学校の授業中などでも、同じように感じることがあるかもしれません。
人間には「視覚」、「聴覚」、「嗅覚」、「触覚」、「味覚」の五感と呼ばれる5つの感覚器官があります。しかし、こうした五感以外にも、人間には時間を感じ取る仕組みが備わっており、その情報が脳に伝達されて処理されています。脳科学は、脳の構造や働き、機能を理解するための学問で、多くの謎が残されている分野です。五感以外にも知覚があることを知ったことで、「目に見えないところで自分の脳がどのように情報を伝え、感じているのだろう?」と疑問に思い、「脳科学」の分野に興味を持ちました。
なぜ時間が長く感じたり短く感じたりするのか?
1日の時間は24時間で、世界中どこにいても同じように進んでいきます。しかし、人間が肌で感じる時間は、心や体の状態によって長く感じたり短く感じたりしますよね。同じ1時間でも、脳内の状態によって時間の感覚が異なるのです。このような時間の感じ方には、脳内にある「体内時計」が関与していると考えられています。
研究によると、私たちは周囲の出来事や自分の体の状態に応じて、この体内時計を働かせ、時間を感じ取っているそうです。特に、感情や脳の活動状態がこの時計に大きな影響を与えることがわかっています。
たとえば、楽しいことをしているときは時間が速く感じられ、逆に退屈や不安を感じているときは時間が長く感じられるといいます。これは、楽しいときには脳がポジティブな刺激で満たされ、細かく時間を意識しなくなるためだそうです。逆に、退屈なときや不安を感じているときは、ついつい時計を気にしてしまい、時間が長く感じられるのです。
興味深いことに、心拍数も時間感覚に影響を与えることがわかっています。心拍数が上がると、時間が「ゆっくり」感じられ、リラックスしているときは時間が「速く過ぎさる」ように感じられるのです。たとえば、自転車から落ちそうになって「もう無理だ、転ぶしかない」と感じたときや、学校に遅刻しそうで焦ってふと時計を見るとすでに家を出なければならない時間だったときなど、時間が一瞬に感じたり、反対にとてもゆっくり流れているように感じたりした経験があるのではないでしょうか。これは、興奮や緊張で心拍数が上がり、脳が情報処理を活発にするため、時間の流れが変わって感じられるからだそうです。
「脳科学」の可能性
私たち人間には、五感があります。しかし、「時間」を感じるための感覚器官は持っていないので、時間の情報を直接的には得られません。それでも、私たちは時間の長さやタイミング、物事の間隔を判断していますよね。今回挙げた要因以外にも、時間が長く感じられたり短く感じられたりする場面は多く、その判断の仕組みにはまだ解明されていないことが多いといわれています。
もし時間感覚についてもっと研究なされ、自由自在に操れるようになったら、限られた時間内で最高のパフォーマンスを発揮でき、毎日をもっと充実させられるかもしれません。このように、時間の感覚は脳科学の分野でも盛んに研究されており、今後のさらなる発展を期待したいですね!僕もこの分野についてもっと学んでいきたいと思っています。
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