学生・エッセイ|建築設計製図2 -都市公園内の個人美術館-
じおん
建築に興味をもったきっかけ
私が建築に興味を持ち始めたのは、まだ子どもの頃のことです。建築家だった母親が家で図面を広げ、その複雑な図面を扱う姿を見て、自然と憧れを抱きました。「いつか自分もこんな風に建築の世界に関わりたい」と感じたのが、建築を目指すきっかけでした。
高校生の頃、一つの建物を設計するだけではなく、その街全体を設計する「アーバンデザイナー」、という言葉に出会いました。アーバンデザイナーとは、単に自分が設計したいものを設計するのではなく、よく言えばシンボルのような存在、悪く言えば時には周囲から異質に見える建物を作る建築家とは異なり、あくまで街全体の調和、そこに住む人々の生活の質の向上を第一に考え、より住みやすい街を造る人のことです。その考え方に共感し、自分自身もそんな街づくりをしたいと感じるようになりました。
「代官山に実際にある公園内に美術館を設計せよ」
大学2年の設計の授業で、「代官山に実際にある公園内に美術館を設計せよ」という課題が出されました。この課題では、まず好きな作家を一人選び、その作家の作品を展示するためにふさわしい美術館を設計する必要がありました。自分は最初の作家選びから難航してしまいました。作家に沿った美術館を設計するということで、代官山という場所や公園という立地に合った作家を選ばなくてはいけないと思いました。
たくさん悩んだ結果、最終的に私は現代彫刻家の「名和晃平」という作家さんの美術館を設計することにしました。名和晃平さんの作品の中でも、シカなどの動物の剥製に様々なサイズの球体を貼り付けた作品のシリーズを展示することにしました。一見、奇抜で批判が集まってもおかしくないような作品ですが、その背後には情報化社会を象徴するコンセプトがあり、都心にあって情報にあふれつつも、その中から選び取られる代官山という場所に、ぴったりだと思いました。
作家さんと展示する作品が決まり、美術館の設計に取りかかりました。名和さんの作品の球体という形状から発想を得て、美術館自体を半球体の形状にしました。この形状にすることで、展示される作品と建物が視覚的に一体となるだけでなく、周囲の公園とも調和できると考えました。建物を公園の一部のように感じさせ、違和感がなく溶け込めるようにするため、敷地に沿って建物を分けて配置し、公園を包むようなデザインにしました。美術館を訪れる人だけでなく、公園を散歩する人々も、自然にその空間に居やすくなるようにしました。
ただ、この課題では作家さんとのつながりを意識するあまり、周りの環境との調和について十分突き詰めることができなかった部分もありました。次の課題では図書館の設計に挑戦しますが、次回は街や環境との調和性をより深く意識して設計していきたいと考えています。
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