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産学公連携事例と注目の研究テーマ紹介 #03【理工学部 山下 健一郎 教授】

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産学公連携事例と注目の研究テーマ紹介 #03

理工学部 総合理工学科 山下 健一郎 教授 × 株式会社 糺の森(ただすのもり)

海洋国家ニッポンの眠れるエネルギーを呼び覚ませ!

海上技術安全研究所で、タービンを囲んで学生や企業関係者と撮影した集合写真(右側中段に山下教授)

 周囲を豊かな海に囲まれた日本。その一方で、エネルギー資源に乏しく太陽光発電などを敷設できる面積も限られており、エネルギーの供給には常に課題を抱えています。
 そんな中、目前に広がる波の力を電力に変えるという壮大な夢に挑戦する研究者が明星大学にいます。学生たちと研究を深めながら企業と連携し、プロジェクトを推進している理工学部 総合理工学科の山下健一郎教授にお話をうかがいました。

理工学部 総合理工学科 山下 健一郎 教授

海は使えるエネルギー資源の宝庫

 私の主な研究分野は海洋再生可能エネルギーです。日本は海に囲まれているにもかかわらず、海洋再生可能エネルギーをほとんど利用していないのが実情です。一方、世界ではこのエネルギーを積極的に活用しようとする動きが進んでおり、洋上風力発電や潮の満ち引きを利用した潮汐発電など、様々な技術が研究されています。
 そのような中、私は台風など日本特有の環境に適した波力発電の開発を目指し、企業と協働して研究を進めています。

 現在取り組んでいる「マグナス効果を用いたポイントアブソーバ型波力発電装置」は、円柱形状のタービンブレード(羽根)をモータで正転・逆転させ、その自転によって発生する揚力を制御することにより、不規則な波の上下運動から得られる力を一定方向の回転運動へと変換し、これにより回転する発電機で電力を得る装置です。
 海洋波は荒れたり静かになったり、とにかく気まぐれです。装置の許容範囲を上回る力が発生することも多々あります。こうした環境下でも装置に過度な負荷をかけず、荒天時にも好天時にも安定的に電力を得る必要があります。

 そこで、波の振動に対する装置の固有周波数を制御することにより、荒天時には非共振現象によって波の力を逃がし、好天時には共振現象によって周囲の波のエネルギーを効率的に吸収する方法について検討しています。

海上試験の様子

マグナス波力発電装置

 私が再生可能エネルギーの研究を始めたきっかけは、東京電機大学在学中に取り組んでいた船舶内発電装置である軸発電システムの研究でした。このシステムの構成が風車と似ていることに気付き、風力発電にも応用できるのではないかと思ったことが出発点です。

 その後、洋上風力発電に興味を持つようになり、浮体式の風力発電装置は波の影響によって稼働率が低下しやすいという課題を知りました。そこで、風車周りの波を吸収し、そのエネルギーを電力に変換することができれば波浪エネルギーを有効利用できるだけでなく、浮体式風力発電装置の稼働率改善にもつながるのではないかと考え、波力発電装置の研究に取り組み始めました。

企業と大学の連携で研究を加速

 前任校であるサレジオ工業高等専門学校時代の教え子の紹介で、株式会社糺の森(ただすのもり)という企業とご縁があり、波力発電のアドバイスやコンサルティングをする形から協業が始まりました。 

 学内ベンチャーを立ち上げるという提案もありましたが高専の規定もあり、産学連携で研究開発を行う形になりました。通常の共同研究は企業側にも専門家がいて互いにディスカッションを行うのですが、今回、波力発電の専門家は私のみ。糺の森の方々には研究計画の立案の他、製造会社や実験施設の選定、自治体との調整や条例に関することなど、町と企業と研究を結びつける役割を担っていただいています。

 また、助成金の申請やベンチャー企業への投資など、資金集めにも尽力していただいています。連携はスムーズに行っていますが、そもそも波力発電を専門とする研究者が少なく研究内容について詳細に議論できる場も多くないため、私が間違えると皆さんに迷惑が掛かってしまうことが唯一の心配事です。

 今後、産学連携で波力発電の研究開発、その先の実用化を加速させていくためには、実験装置のコストダウンと、実験場所の確保、法整備が必要です。海外では海の一角をレンタルで自由に使える実験サイトが多数ありますが、日本にはあまりありません。
 実験にかかる費用が抑えられれば、参入障壁も低くなります。そのための法整備も並行して進めば商用電源化の道も開けてくると思います。

本学29号館で製作・改良中のマグナスタービン発電機

偏差値なんて関係ない!勉強嫌いが研究のトリコに

 そもそも私が電気機器に興味を持ったのは、エレベーター据付工事をしていた父の影響でした。当時は勉強嫌いで、偏差値も低空飛行。高校時代も勉強そっちのけで遊びに部活に夢中になっていましたが、父の仕事を手伝ううちに色々な機器の仕組みを理解したくなり進学を意識しました。

 近くに東京電機大学の分校ができたと聞き「近くていいや!」と入学すると、そのキャンパスは1年だけで残りは東京の神田キャンパス。大学の知識なんてその程度でした。入学後は志も低くなり大学生活を満喫していましたが、とある先輩に「俺の研究室に来い!」と言われ、学内でもトップクラスに厳しい研究室に配属されそうになったものの、あえて間違えたフリをして、共同研究者の先生の研究室に入りました。そこで超電導変圧器と出会い、一気に研究へ没頭。

 大学院に進むことを決めたものの推薦枠の関係で超電導変圧器の研究を行えず、結局、誘ってくれた先輩の船舶内発電装置の研究を手伝うことに。志望先がコロコロ変わるので親は心配していましたがその後、船舶内発電装置の魅力に取りつかれました。

 大学院修士2年まで、発表論文5本で国際会議にも参加し、ノリノリでした。しかしながら、博士1年で研究が行き詰まり発表論文0本に。
 修了へのプレッシャーから辞めたい気持ちが膨らみ、先生に伝えようと研究室に行くと、事の大きさを察した先生から、放課後に話を聞くから研究室から出るなと言われました。

 しかし私は研究室を出てしまい、大学のある神田から皇居の方にふらふら歩いて行きました。ふと、遠くに東京タワーが見え、なぜか歩いて行ってみたくなりました。実際に歩いて到着した時、「どんなに遠くても少しずつ歩けば必ず辿り着けるんだ」と悟り、今までのモヤモヤがすっかり晴れました。

 大学に戻って研究を再開した私を見て先生は呆れていましたが、その経験で後輩や教え子には「千里の道も一歩から。一歩前に進めば、さっきより進んでいるから大丈夫」と背中を押せるようになりました。

山下ゼミの授業の様子

学生たちに、未来の日本に。つないでいきたい想い

 本学に着任して間もないため、現在は授業の準備に追われていますが、可能な限り学生たちと共に試行錯誤しながら研究に取り組んでいきたいと思っています。若い彼らの熱量の高いアイデアを、うまく研究に誘導してあげたいです。海洋再生可能エネルギーの輪を広げて行くためにも、卒業生とのつながりも大事にしたいですね。

 社会的な観点からみると、もし世界中の人々が日本人と同じ生活を送った場合、地球が何個あっても足りない状況になります。我々はそれだけ莫大なエネルギーを消費しているのです。
 多くの方はその事実を自覚していないと思いますが、波力発電や海洋再生可能エネルギーの研究を通して、次世代に地球を残すために必要な事を伝えていければと考えています。

山下ゼミの学生たち

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