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産学公連携事例と注目の研究テーマ紹介 #01【理工学部 総合理工学科 小山昌志 教授】

連携研究センター

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Focus on Research
 産学公連携事例と注目の研究テーマ紹介 #01

【理工学部 総合理工学科 小山昌志 教授】×【東京都立 産業技術研究センター】×【地元企業】

明星大学は中小企業の技術支援や高度技術者の育成に向けて、東京都立産業技術研究センター(都産技研)と業務連携に関する協定を結び、これまで地域の産業の発展に貢献してきました。明星大学と都産技研は、福祉工学をはじめとするさまざまな領域の研究に共同で取り組み、現在は主に複合材料やロボットの分野で研究プロジェクトを進めています。複合材料分野では、理工学部 総合理工学科の小山昌志教授が 2024年度から、都産技研と地元企業の三者による新たな共同研究をスタートしています。

理工学部
総合理工学科
小山 昌志 教授

都産技研 研究開発本部
機能化学材料技術部
マテリアル 技 術 グループ
菅井 美柚 研究員

ガラス繊維
強化プラスチックの不燃化

炭素繊維( カーボンファイバー )を使った 航空宇宙分野向けの 複合材料を専門とする小山教授は 2020-2022 年度、都産技研の 複合素材技術グループなどと共同で、カーボンファイバーを強化材としてプラスチックに加えた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材料に関する研究を行いました。特にCFRP 製フライホイールの成形に向けて、高速回転時に発生する応力に対し、湾曲部に任意の自由度を持たせるため 、CFRP材料の 最適な繊維配向 をシミュレ ーションなどにより求めました。小山教授は「学術的な意義に加え、成形時の 指針が 明確 になったことから、さまざまな 構造体への CFRP 適用の可能性が広がるだろう」と研究の手応えを感じています。

これに続く形で、現在は企業も交え、ガラス繊維(ファイバー) を強化材としてプラスチックに加えた「 ガラス 繊維強化 プラスチック( GFRP)の 不燃化 」に関する 新たな テーマで都産技研との共同研究に乗り出しました。そこで活躍するのが、本学卒業生で 小山研究室出身の 都産技研 研究開発本部 機能化学材料技術部 マテリアル技術グループの菅井美柚 研究員です。菅井さんは大学院 理工学研究科 機械工学専攻の修士課程を 2022年度に修了し、都産技研に就職しました。航空宇宙分野に関心があり、小山研究室の 門をたたいた菅井さん。学生時代は GFRP を研究テーマに選び、次第に研究にのめり込んでいきました。「論文にまとめるのは大変でしたが、国際会議で 発表するといった経験もでき、研究生活は楽しかった」と振り返ります。

現在、社会人 2年目の菅井さんは、大学4 年生の頃から行ってきたこの GFRP の研究を都産技研でも継 続しています。 指導教員だった小山 教授は学生を “ 共同研究者” として扱い、彼らの自主性に委ねているために 、「今も自分のテーマとして、同じ研究を続けられているのではないか 」と 菅井さんは評価しています。菅井さんは「発表練習など 指導は厳しかったですが 、大学ではじっくりと研究に取り組め、その学びが都産技研の研究活動にも生きています」 と話し、現在は専門分野の異なる多様なチームメンバーのアドバイスを受けながら、独立した一人の研究者として、地域の産業の活性化に向けた研究に励んでいます。

菅井さんを中心とする都産技研のチームと小山教授、企業の三者で取り組む GFRP の 不燃化の研究は 、 可燃性 のプラスチックに ガラスファイバ ー を加えたGFRPに、添加材料を導入して燃えにくくすることを目指しています。企業が求める新しい 構造材料のニーズと、都産技研、明星大学が持つシーズが合致したことで、今回 の共同研究プロジェクトが立ち上がりました。菅井さんにとって、 学生時代 の恩師は「今なお、研究の良き相談相手」であるそうです。



小山教授は三菱電機などの民間企業を経て明星大学へ移り、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や 他大学とも積極的に連携しな がら、航空宇宙用途のさまざまな複合材料 について、材料開発から構造体の設計、評価までを手がけています。こうした共同研究などを通じて、 社会に求められる 新たな複合材料を開発するだけでなく、繊維強化プラスチック(FRP)の特性を生かしたバイオリンの製作といったユニークな研究にも展開させています。教育においては、修士課程で優れた成果を挙げた菅井さんのように、世の中にインパクトを与えられる研究者を輩出することが自らの使命であるとし、そのために「卒業して社 会に出た後でも、大学や教員をどんどん活用してほしい」と望んでいます。

一方、菅井さんは都産技研の研究者として実績を積み、いずれは 熱可塑性プラスチックなど新たな FRP 材料の研究にも挑みたいと考えています。「 もともと修士課程 にさえ進むつもりはなかった」という菅井さんですが、都産技研の制度を活用し、博士号の取得も視野に入れているそうです。今後は学会活動なども活発に行い、研究と同時に知識もより深め、将来は「中小企業をサポー トできる 、 東京都の FRP 研究の第一人者になりたい」と夢を膨らませています。



研究者には「優秀さよりも、自らの好奇心に従い、楽しみながら 目の前のことに全力を尽くす能力が必要」と話す小山教授。現在も 変わらず菅井さんに目をかけながら、都産技研と密に連携し、企業とともに実用化を見すえた研究に取り組んでいます。このように都産技研との協定締結以降、地域密着型の研究が一層盛り上がり、 都産技研における明星大学卒業生の活躍の機会も増えるなど、産学公連携による成果と好循環の輪が広がっています。

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