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大学緑地という新たな研究分野を開拓【理工学部 総合理工学科 柳川 亜季 准教授】

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明星 SATOYAMA プロジェクト レポート【取材:研究広報さん】

明星大学の「明星 SATOYAMAプロジェクト」は 、多摩地域の里山をテ ーマに大学の自然環境を活用し学生や教員が地域の人々と一緒に活動する取り組みです。
今回は、プロジェクトの発起人である柳川亜季 准教授に「大学緑地」の魅力やプロジェクトについて語っていただきました。

柳川 亜季 准教授(理工学部 総合理工学科)

データサイエンス学環准教授も兼任。景観生態学や土壌水文学、緑地学を専門とし、特に気候変動下における 脆弱性評価や植物生態学、都市緑地の研究に注力。
SATOYAMAプロジェクトでは里山ファンを増やすように専門分野の垣根を越えたつながりを生み出す。プロジェクトを通じて学生や卒業生も成果を出している。

大学緑地って面白い!

研究広報:今回は「 大学緑地の面白さ 」というテーマでお話を伺いたいのですが、大学緑地にはどの ような魅力があるのでしょうか?

柳川先生:大学緑地は、とてもユニークな存在です。
公園ほど強剪定されることがなく、他大学でも昔からの自然がそのまま残っていることが多いので、「大学緑地」の存在意義や研究の可能性に着目しています。
明星大学でも、調査を進める中で貴重な発見がたくさんありました 。

研究広報:具体的にはどのような調査をしているんですか?

柳川先生:明星大学を含む15大学で樹木の成長量を観測し、大学緑地の価値や可能性を探っています。また、土地の歴史や変遷を紐解きながら、
─ 例えば、田んぼや畑だったのか、明星大のように里地だったのか ─
かつてその土地がどんな姿だったのか土地の歴史を調べるのもとても面白いんですよ。明星大学は多くの森林や林縁部が残存する大学緑地です。

「 林縁部 」とは?

研究広報:「林縁部」という言葉が出てきましたが、それはどのような場所を指すのでしょうか?

柳川先生:「 林縁部 」というのは 、森とその外の土地が接する部分のことです。このエリアは光がたくさん入るので、森の内部とは違う植物や動物が多く生息しています。 明星大学の林縁部では、絶滅危惧種や多摩地域で親しまれてきた植物が見つかっています。

研究広報:林縁部がそんなに重要な場所だとは知りませんでした 。 具体的にはどのような植物が見つ かりましたか?

柳川先生:多摩地域の在来種であるタチツボスミレや、絶滅危惧種のキンランやタマノカンアオイが生息していました。他にも、外来種が増えている場所なども調査しています。過去と現在の地形図を比較する「今昔マップ」を参照しながら調査するんですが、これによって、今後保全するべき場所がわかります。

研究広報:再開発の際の参考になるんですね。絶滅危惧種が偶然残っているというのも大学緑地のおもしろさですね 。

柳川先生:「大学緑地」という、新たな研究分野だと思っています。

各植物の被度の調査。
学内46か所に植生調査枠を設置して
毎月調べました。

横断的な取組みで 多くの人をまきこみ、自然の魅力を体感する

研究広報:他にもどのような活動をされているのか 教えてください 。

柳川先生:はい。例えば、森林を使って「カーボ ン ニ ュートラ ル 」を目指す活動や、ホタルの遺伝子を調べて多様性を探る研究、さらには絶滅危惧種を含む哺乳類や鳥類の調査など、 活動は多岐にわたっています。また、学生たちが主体的に調査に関わることで、自然の魅力を感じながら学べる場を作っています。

学生が大学緑地に
バードハウスを設置

研究広報:理工学部以外の学生さんも 参加しているんですよね?

柳川先生:理工学部、デザイン学部、教育学部、心理学部の学生が多いですね。みなさん主体的に参加しています。

研究広報:地域の中高生や一 般の方も関わることができるのでしょうか?

柳川先生:もちろんです。学生や教員だけでなく、地域住民や行政、他大学とも協力しな がら、自然を守り、活用するための方法を一緒に考えています。例えば、自然観察イベン トを開催して地域の方々と成果を共有したり、 行政と連携して環境保全の計画を進めたりしています。

研究広報:このプ ロジェクトでは、いわゆる自然の「 保全 」活動だけでなく「 活用 」にも力を入れて いるんですよね?

柳川先生:SATOYAMAプロジェクトが大事にしていることはまさにそれで、大学緑地という資源を軸に、さまざまな 立場の人々がつながることで、新しい発想や取り組みが生まれています。これが、このプロジェクトの大きな魅力の一つです。デザインや教育などそれぞれの分野の専門家がそろっているのも強みですね 。

研究広報:多摩の里山を「 みんなで楽しむ 」取り組みですね 。

柳川先生:こうした活動を通じて、「自分も何か始めてみたい」と 思ってもらえるきっかけになれば 嬉しいですね。

デザイン学部の教員を中心に、
花のある暮らしをテーマに開催した
「つながるフラワーパレット」

学内で「アナグマ」を発見!

SATOYAMAプロジェクトの詳細はこちら

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年月掲載

*内容・経歴は取材もしくは執筆時のものです。