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理工学部

ごみ埋立地からの
アルカリ性浸出水の流出を防ぐ

宮脇 健太郎

理工学部 総合理工学科
データサイエンス学環
教授/博士(工学)
資源・廃棄物研究室

廃棄されたごみが焼却され、埋め立てられる最終処分場では、アルカリ性物質の流出が課題になっている。宮脇健太郎教授は、CO2を溶液にしたCO2水を散水することで、埋立地を中和する方法に着目。環境に優しく、実用可能な技術の開発を目指している。

メインイメージ

長期にわたり最終処分場の
pHを管理する方策が必要

私たちは生活の中で、毎日多くのごみを捨てている。こうした一般廃棄物の約80%は焼却され、その残りが海や山間地にある最終処分場に埋め立てられる。

「焼却後に残る焼却残渣(焼却灰)には、多くのアルカリ性物質が含まれており、埋立地は常にアルカリ性(高pH)環境になっています。そこに雨が降ると、焼却灰層から浸出水が流れ出し、周辺の土壌までアルカリ性にしてしまう危険があります」と、宮脇健太郎教授は語る。

アルカリ性の浸出水は、微生物を死滅させたり、植物を損傷するなど、生態系に悪影響を及ぼす他、一部の重金属が溶け出し、土壌汚染につながる懸念もある。そのため最終処分場では、焼却後に中和処理などを施し、アルカリ性物質が周辺土壌に染み出すことを防いでいる。「しかし古い処分場や海面最終処分場では、埋立層から排出水準(陸上処分場でpH8.6以下、海面処分場でpH9.0以下)を満たさない高pH浸出水の流出が、長期にわたって続いている事例もあります」と言う。

宮脇教授は、全国にある陸上の一般廃棄物最終処分場1679カ所を対象にアンケート調査を実施し、高pH浸出水の実態調査を行っている。

「その結果、浸出水pHが排水基準のpH8.6以上を示した処分場は、12.9%に及びました。基準値を満たしている処理場でも、分布やアルカリ側に偏る傾向にあり、将来埋立状況が変化した場合には、高pH浸出水が発生する懸念は十分あります。とりわけ埋立が終了して10年以上経った古い処分場は、すべて高pHの課題があることが判明しました」

これらの調査からも、埋立地のpHを長期にわたって管理する方策が不可欠であることがわかる。そのため宮脇教授は、既存の方法より低コスト、低環境負荷で、実用可能な高pH解決法を研究している。

調査対象処分場の内水ポンド(池)

CO2溶存溶液を焼却灰層に供給し
中和効果を高める方法を研究

埋立地の浸出水は通常、高濃度の二酸化炭素(CO2)を曝気したり、硫酸など酸性の薬剤によって中和される。しかし酸性の薬剤は環境に与える影響が大きいため、CO2の気体を使って中和する方法が検討されてきた。

CO2は大気中に無限にあり、低コストで使用できることに加え、CO2排出削減(脱炭素)にも貢献できる。宮脇教授も、これまでの研究で、大気中のCO2だけで浸出水pHを低減できることを確かめている。しかしこの方法にも課題がある。気体の状態では、不均一な焼却灰層の内部にまでCO2を注入させることが困難で、中和を十分に進めることができないというのだ。

この課題を解消するため宮脇教授は、気体ではなく、CO2を溶液(炭酸水)にして散水し、焼却灰層深くまで中和する方法を研究している。CO2溶存溶液を埋立地に供給する方法は、まだ実用化には至っていない。着目したのが、ウルトラファインバブル(UFB)技術だ。

UFBとは、直径1μm未満の非常に微細な泡を指す。特徴の一つは、水中での滞留時間が長いことだ。液中のCO2をUFBにすれば、より長く焼却灰層に滞留し、深くまで浸透させることが期待できる。

宮脇教授は、UFBの生成装置を作成し、さまざまな条件でCO2溶存量を高めたCO2-UFB水を生成。最終処分場の環境を模した模擬焼却灰層を使って、CO2水やCO2-UFB水が高pH浸出水を中和できるかを調べるとともに、最も中和が促進する条件を検討している。

これまでの研究で、UFBを発生させ、ポンプで溶液に送り込むCO2高溶存溶液生成用装置を作製。これで生成したCO2-UFB水を模擬焼却灰層に通水し、浸出水pHが低下することを確認している[図1]。

図1:流出液pH変化

ウルトラファインバブル炭酸水の
pH低下効果を検証

最近の研究では、50%大気・50%CO2の条件で生成したCO2-UFB水を用い、焼却灰層の中和について検討した。

まず角型容器に3Lの純水を入れ、その中に50%大気・50%CO2を含むUFBを入れ、UFB-CO2水を生成する。このUFB-CO2水と純水を模擬焼却灰層に流し入れ、焼却灰の中和がどのように進むのかを検証した。

その結果、以前CO2100%の条件で生成したCO2-UFB水よりも均一で密度(泡の個数濃度)も高いUFB水を作れることがわかった。「このCO2-UFB水を通水すると、上層から中層、下層へと緩慢に中和が進んでいくことが確認できました」[図2]。これにより、CO2-UFB水が、時間をかけながら、焼却灰層の微細領域まで中和を進められる可能性が示唆された。その他、焼却灰とCO2の反応による有害物質の溶出が低濃度で、安全性が高いことも確かめられた。今後はCO2濃度などの最適条件を見つけるべく、さらなる検討を進めていくという。

図2:通水後溶出試験pH

宮脇教授が先進技術を追求する以上に力点を置くのは、社会に実装可能な方策を見つけることだ。そのために模擬環境を用いた実験とともに、実際の最終処分場の調査も実施している。これまで10年にわたり、調査対象の最終処分場にある内水ポンド(池)水面でのCO2吸収能の促進状況を調査し続けているのも、その一つだ。

大量生産・消費・廃棄の時代から脱却し、資源を循環利用しながら持続的に経済成長していく「循環経済」を目指す現代にあって、最終処分場は、どうしても循環しきれないモノが環境に漏れないよう封じ込める場所、いわば環境を守る最後の砦だ。宮脇教授の研究成果が、この「最後の砦」をより堅牢にすることに役立てられる。

CO2高溶存溶液生成用装置

宮脇 健太郎

理工学部 総合理工学科
データサイエンス学環
教授/博士(工学)
資源・廃棄物研究室

宮脇 健太郎

専門分野

環境負荷低減技術、保全修復技術、環境材料、リサイクル技術、環境影響評価、土木環境システム

キーワード

廃棄物工学、衛生工学、最終処分場、有害物質制御

研究室HP

資源・廃棄物研究室

教員情報

明星大学教員情報 宮脇 健太郎

東京都出身。大学院時代に写真同好会に入っていたこともあり、風景写真を撮影するのが趣味の一つ。最近は、妻が経営するパンと焼き菓子の店で、新作を試食するのも楽しみ。将来、資源循環ビジネスのコンサルティングファームを起業するのが、目標。

2026年3月掲載

*内容・経歴は取材もしくは執筆時のものです。