わくわく機械屋 #01
舫う
宮本 岳史
理工学部 総合理工学科
教授 / 博士(工学)
鉄道車両の運動と機械力学の研究室
船も好きです。なによりも、気づかないほどの静かな動き出しに、気品を感じます。電車や自動車と異なり、振動や加速度を感じない船の動き出しは優雅でもあります。旅にうかれていると、いつ動き出したのかに気づかないことが度々です。出港のドラを待っていても、気づくと離岸していたりします。船は桟橋にロープで舫います。船をつなぎ止めるロープを舫い綱と呼びます。
学生の頃、北海道洞爺湖の遊覧船を舫うアルバイトをしていました。このときの経験・思い出と共に、船の出入港、桟橋への着船がたまらなく好きなのです。
ぼくは桟橋の上で、大きな船が近づいてくるのを待ちます。湖であっても、その日の風によって、船長さんによって、アプローチは異なります。船首か船尾が桟橋に近づくと、船員さんから舫い綱が桟橋上に投げ渡され、重い舫い綱を拾い上げて、手足を巻き込まないよう注意して慌てず急いでビットに巻き付けます。この舫い綱を引き締めたり、緩めたり、船長さんの操船を補助して、桟橋に着船させ、お客さんが乗り降りできるようにするのが仕事でした。やりがいと共に、楽しかったなぁ~。
船は、ぷかぷかと浮いているので、水や風の流れとともに動きます。碇を下ろすか、舫わないと、船はどこかに流れていくのでしょう。このことが、船の気品ある起動の由です。つまり、船はとても動き易い乗り物です。物理的に、動き出しの抵抗がとても小さいのです。ゆっくり動くとき、走行抵抗も小さく、大きな船体に重い荷物、多くの人を乗せて運ぶのにとても適しています。少ないエネルギーで重い荷物を動かす指標の輸送効率で乗り物を比較すると、船はダントツの1位です。
また、日本国内では7500年前の丸木舟が千葉県で確認され、さらに遠い昔、約35000年前の石器時代には、海を越えた黒曜石の移動が確認されていて、人は船を使っていたものと考えられています。船は、とても古くから発達してきた乗り物で、人間による「ものつくり」の歴史にもロマンを感じます。
参考書:『よくわかる最新船舶の基本と仕組み』 川崎豊彦著(秀和システム)
宮本 岳史
理工学部 総合理工学科
教授 / 博士(工学)
鉄道車両の運動と機械力学の研究室
専門分野
機械力学
キーワード
車両運動、鉄道車両、走行安全
研究室HP
鉄道車両の運動と機械力学の研究室教員情報
明星大学教員情報 宮本 岳史2024年7月掲載
*内容・経歴は取材もしくは執筆時のものです。