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多摩地域まち歩き #01

日本一のニュータウン、多摩ニュータウン

建築学部・深井先生×もんでんゆうこさん

大学近辺をまち歩きして紹介する今回の企画、最初は多摩ニュータウン(以下、NT)をご紹介したいと思います。多摩NTは1960年代の首都圏における人口拡大によって発生していた郊外部のスプロール化* 1)に対処するために、良好な市街地の形成を目的として1965年に閣議決定されて以来、約40年*2)にわたって開発が進められてきた日本で最大規模のNTであるとともに、街づくりのリーディングプロジェクトとして位置付けられ、都市のインフラ整備から、様々な住戸タイプの供給まで、先進的な街づくりへのチャレンジが試みられてきました。

* 1) 無秩序に開発が広がっていくこと
* 2) 2005年度末に事業としては完了した

多摩NTは、ジブリ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」で描写されているように、当時田畑や山林が広がっていた多摩丘陵を切り開いて開発されました。そのため、全体としては山だった部分を削り、その土で谷だった部分を埋めることで高低差を減らして、山の部分はさまざまな形態の住宅地と歩行者空間、谷の部分はメインの車道といった形で自然地形を生かした立体的な歩車分離構造になっています。そのため、駅から歩行者専用道路である緑道を伝って横断歩道なしで歩行できる空間が形成されています。また、鉄道は川沿いの谷地を走っており、独特の景観を形成しています。

自然地形を活かした立体的な歩車分離構造

今回は、高低差のあるこの地域で一番低い多摩センター駅からパルテノン多摩までの、街のシンボルとも言え駅前のペデストリアンデッキの坂を進み、パルテノン多摩の階段を登ると多摩中央公園に出ます。多摩中央公園を抜けると、そこから先は住宅エリアに入りますが、そこに見えるのは、ストリート型住棟と呼ばれる形で住宅エリアの入口としてデザインされたプロムナード多摩中央が迎えてくれます。この住宅はプラス1住宅と呼ばれ、街に開いたフリースペースと呼ばれる部屋がついています。

ペデストリアンデッキの傾斜を測る学生
ペデストリアンデッキの傾斜を測る学生
プロムナード多摩中央のプラス1住宅
プロムナード多摩中央のプラス1住宅

前述の通り、多摩NTにはさまざまな形態の住宅地があり、低層のタウンハウスや中層の住棟を横目に見ながら緑道を進むと、小高い山のある鶴巻東公園にでます。ここに登ると近隣の団地の屋根の景観が一望できて、非常に景色が良いですが、実はこの山は、前述の谷を埋める際に余った土を使って作った人工の山なのです。

今回はほんの一部をご紹介しましたが、多摩NTに広がる緑のネットワークは総延長が40kmを超えていると言われています。ぜひ一度、さまざまな住宅を見ながら散歩をしてみてはいかがでしょうか。

鶴牧山からの景色

深井 祐紘

建築学部 建築学科
准教授 /博士(工学)
建築計画研究室

深井 祐紘

専門分野

建築計画、都市計画

キーワード

郊外住宅地、マンション建替え、団地再生

研究室HP

深井研究室/明星大学建築計画研究室

教員情報

明星大学教員情報 深井 祐紘

もんでん ゆうこ

線画家

もんでん ゆうこ

金融機関やJR東日本情報誌などのイラストを制作。2019年より平和、動物をテーマに制作を始め横浜赤煉瓦倉庫、NU茶屋町(大阪)などで作品を発表する。2022年には多摩平の森アートプロジェクトに参加、壁画(2m×5m)を描く。人と人とを繋ぎ、暮らしを豊かにするアート制作を続ける。日野市南平にアトリエを構える。

公式ウェブサイト

日野市在住の線画家 アーティスト もんでんゆうこ

2024年7月掲載

*内容・経歴は取材もしくは執筆時のものです。