研究前にひと休み #01
酵素研究はまるで宝さがし!?
冨宿 賢一
理工学部 総合理工学科
教授 / 博士(理学)
生物機能有機化学研究室
冨宿先生の普段されている研究を教えてください。
タンパク質の「酵素」を使って「有機合成」を行い、香料や化粧品、農薬、医薬品など、多くの分野で役に立つ化学物質を作り出す研究を行っています。
ぜひ今日は暮らしの役に立つ「酵素」について教えてください。
例えば、味噌や醤油、お酒などの醸造や、パンの製造では、コウジカビや酵母などの微生物が利用されています。発酵とよばれる過程で起こる化学反応の触媒として、微生物がもつ酵素が働いているわけです。
ほほう。微生物と酵素はどのような関係なのですか?
私たちはまず目的の化学反応を触媒する酵素を探すために、自然界の微生物を探すところから始めます。微生物の中にはたくさんの酵素が含まれていて、微生物は培養によって短時間で増殖できるので、繰り返し利用するにも都合がいいです。
ふむふむ。目的の酵素を見つけ出すために、まずは微生物を探すのですね。具体的にはどうやって探すのでしょうか。
まず、あちこちの土地から土を採取して集め、目的とする化学反応が起きそうな環境を試験管の中で用意します。その予想が当たると、その化学反応を起こした方が都合の良い微生物が優先して増え続けます。
土地によって、微生物の種類が違うのですか。
土地によって全然違うので旅先でスプーン一杯分の土を集めて持ち帰ることもあります。特殊な環境に生きる微生物は面白くて、たとえば、温泉や火山、深海など、温度やpH、塩分などの過酷な環境で生育するような微生物もいます。これらの極限環境で生育するような微生物は、特殊な酵素をもっているわけです。
ふむふむ。そういえば、ペットボトルなどのPET樹脂を分解する微生物が日本で発見されたというニュースを見たことがあります。
最近では、海洋に流出するプラスチックごみが世界的にも問題となっていますが、これらを分解する微生物や酵素の研究なども盛んに行われています。
なるほど。まだまだわからない膨大な微生物が生息していて、地道に掘り起こしていく感じでしょうか。まるで宝探しですね!
そうですね。私はこの酵素が示す機能を、いらないモノや厄介なモノを分解するのではなく、新しいモノや役に立つモノを合成するのに活かす研究も行っています。次回はその話をしましょうか。
楽しみです! 冨宿先生ありがとうございました!
冨宿 賢一
理工学部 総合理工学科
教授 / 博士(理学)
生物機能有機化学研究室
専門分野
生物有機化学、応用微生物学
キーワード
生体触媒、酵素、微生物、光学活性物質、生物活性物質、不斉合成、ドミノ反応
研究室HP
生物機能有機化学研究室教員情報
明星大学教員情報 冨宿 賢一2024年7月掲載
*内容・経歴は取材もしくは執筆時のものです。